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健康を気にしている方必見!蕎麦は栄養素の宝庫だって知ってた⁉

"いつまでも元気で活動的な身体を、なんでもおいしく食べられる丈夫な胃腸を、保っていたい"

健康に関心が強い方にとっての願いを簡潔にまとめると、こういったことではないでしょうか。幸せな毎日に健康は欠かせません。

そんな健康に対する効果が高い食材の代表が「蕎麦」です。しかし実際のところ、蕎麦の健康効果とはどういったものなのか、知っている方は少ないのではないでしょうか。

そういった方へ、この記事では蕎麦に含まれる豊富な栄養素や、ダイエットに効果的な理由もあわせて、ご紹介します。

1.実は蕎麦には豊富な栄養素が含まれています!

蕎麦といえばヘルシーというイメージを持つ方もいらっしゃると思います。では具体的に、蕎麦に含まれる健康効果の高い栄養素をご紹介します。

1-1. 蕎麦に豊富に含まれてる"ルチン"や"カテキン"とは?

ポリフェノールは、今や私たちの健康の、大切なパートナーと言っても過言ではありません。抗酸化力が強く、動脈硬化などの生活習慣病予防に効果的と言われています。

そんなポリフェノールの一種が、蕎麦に含まれるカテキンやルチンです。

緑茶の苦み成分の元となるカテキンは、殺菌効果や抗酸化力が高く"第7の栄養素"とも呼ばれるフィトケミカルのひとつです。

蕎麦にはこのカテキンが豊富に含まれています。カテキンの抗ウイルス・抗菌作用によりノロウイルスなどの感染性胃腸炎や、O-157予防に効果を発揮します。他にも食後の血糖値上昇を抑えるため、肥満予防に効果的です。

そしてルチンは、フィトケミカルの中の色素成分を担うフラボノイドのひとつで、以前は"ビタミンP"と呼ばれていました。

ルチンには、毛細血管を強くし、血流を良くする効果があります。「蕎麦といえばルチン」と言われるほど、蕎麦に含まれる健康成分の代表的なイメージがあるでしょう。

ルチンは脳梗塞や心臓病などの血栓が原因となる病気の予防に効果的です。他にも、アルツハイマー型認知症予防や糖尿病などの生活習慣病予防、ビタミンCの吸収を良くすることから、美肌にも効果があると言われています。

ちなみに、蕎麦1人前で一日に必要なルチンを摂取することができます。しかし、蕎麦に含まれるルチンの量は、北方の寒い地域で育った蕎麦よりも、南方の暖かい地域で育てられた蕎麦の方が多いことがわかっています。

また、過酷な環境で育てられた蕎麦の方がルチン含有量は多く、秋よりも夏に育てられる蕎麦の方がルチンは豊富に含まれているそうです。

1-2. コリンは肝機能に良い?

蕎麦に含まれるコリンは、ビタミンの働きを助け補助的な働きをするビタミン様物質に属します。

コリンは、脂質の代謝やコレステロール値の抑制に効果を発揮するため、高血圧予防に効果的です。この効果の最たるものは、肝臓に脂肪が沈着するのを防ぐ"脂肪肝予防効果"でしょう。腎臓の働きを助ける効果もありますので、この相乗効果でお酒を飲む方にオススメです。

他にもコリンは脳の活性化に役立ち、記憶力の低下やアルツハイマー型認知症に効果的と言われています。

1-3. 蕎麦の食物繊維は食品の中でトップレベル

蕎麦には、食物繊維が豊富に含まれています。健康食品に必ずと言って良いほど含まれている食物繊維は、糖の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑えてくれる効果があります。

そんな食物繊維には、2種類があります。海藻や野菜の粘り成分に多い"水溶性食物繊維"と、文字通り食物の繊維のような食感を生み出す"不溶性食物繊維"です。

蕎麦に多く含まれるのはこのうちの"不溶性食物繊維"です。便通改善に効果を発揮し、整腸作用があるため、大腸ガンの予防にも効果的であり、便秘で悩む方の強い味方でしょう。胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄する効果も期待できるので、脂肪吸収抑制効果や悪玉コレステロール除去にも効果的です。

また、胃腸内の掃除をしながらゆっくり移動するため満腹感が続き、食べ過ぎ防止につながることから、ダイエットに利用されます。

1-4.タンパク質は精白米の3割以上

蕎麦には、筋肉を作る元となるタンパク質が豊富に含まれています。その割合としては、同じ炭水化物である精白米の9.2%と比べると、12.1%と3割以上も多く含まれているのです。このタンパク質量は穀物の中でもトップクラスを誇ります。

そして蕎麦に含まれるタンパク質は必須アミノ酸を含んでいます。このアミノ酸バランスがとても優れている点もポイントです。このことから、蕎麦は非常に良質なタンパク質を含んでいると言えます。

2. ダイエット効果も期待できる

蕎麦にはこのように様々な健康効果がありますが、ダイエットにも有効な成分が含まれています。

2-1. 蕎麦は炭水化物ですが...

しばしばダイエットの天敵のように扱われる炭水化物ですが、蕎麦も炭水化物のひとつです。炭水化物は糖質と食物繊維で構成されていて、蕎麦は炭水化物の中でも食物繊維が多く含まれているという特徴があります。

同じ炭水化物であるうどんやパンは小麦粉から作られています。しかし、蕎麦は食後の血糖値上昇を防ぐ"低GI食品"であるそば粉が主な原料です。つなぎとして小麦粉を使用する二八蕎麦でも、8割がそば粉から作られています。

これらのことから蕎麦は、比較的太りにくい炭水化物だと言われています。

2-2. ビタミンが豊富に含まれている

蕎麦に豊富に含まれているビタミンはビタミンB1・B2です。

ビタミンB1は糖質の代謝を促す働きをしますので、糖質を効率よくエネルギーに変えてくれます。代謝された糖質は身体に溜まらず、脳の活動や筋肉の働きを正常に保つことに役立ちますので、ダイエット中の方には積極的に摂っていただきたい成分です

またビタミンB1は、疲労回復にも効果を発揮します。ビタミンB1が不足すると体力の低下を招き、食欲不振の原因になる可能性があります。

そしてビタミンB2には、糖質や脂質・タンパク質の代謝を助け、新陳代謝を促進する働きがあります。

そのためダイエットに必須なビタミンです。筋肉や髪・皮膚を作るなど、健康な身体の成長や維持に欠かせません。ビタミンB2が不足すると、肌荒れや口内炎の原因にもなります。

ビタミンB1・2はダイエットに欠かせないビタミンです。上手に利用して、蕎麦ダイエットに活かしましょう。

2-3.消化酵素が豊富に含まれている

炭水化物の中でも食物繊維が豊富な蕎麦は、ともすると消化に悪いのでは?と思われがちです。しかし蕎麦には消化酵素が含まれていて、さらに蕎麦のデンプンは糊化温度が低く、水でも溶けやすいという特徴を持っています。

このふたつの効果で、蕎麦は温かくても冷たくても消化が良く、胃腸が悪い時でも胃にやさしい食材とされています。

蕎麦に含まれる消化酵素により消化を促進されます。そのため、私たちの体内にもともと持っている消化酵素は消費されません。その分、体内の代謝酵素が活発に働くので、自然と痩せやすい身体に近づいていくことができ、ダイエットにも効果的です。

3.蕎麦を食べるときのコツとは?

こんなに健康効果が高く、ダイエットにも効果的な蕎麦ですが、食べ方に工夫をすることで、その効果を余すところなく吸収することが出来ます。

例えば蕎麦にはビタミンAやビタミンCが含まれていないので、これらのビタミンが含まれている野菜を一緒に摂ると、ビタミンバランスが良くなります。

特にルチンはビタミンCと相性抜群なので、蕎麦を食べるときは是非ビタミンCを意識して摂りましょう。大根おろしが添えられた「おろし蕎麦」は、ビタミンCと消化酵素を一緒に摂れるので、オススメ食材のひとつ。ルチンは水溶性で水に溶けやすいので、そば湯もぜひ頂きましょう。

他にも蕎麦に相性の良い食材としては、葱・わさび・山芋・海苔やわかめなどがあげられます。葱はビタミンB1の吸収を良くし、わさびはビタミンB2の吸収を助けます。

また蕎麦には不溶性食物繊維が多く含まれていますが、不溶性食物繊維は胃や腸の水分を吸収するので、便が固くなりがちです。この症状を緩和してくれるのが水溶性食物繊維をバランス良く摂ることで、不溶性と水溶性食物繊維を8:2ほどの割合で摂ると良いと言われています。

山芋・海苔やわかめなどの海藻類には、水溶性食物繊維が多く含まれています。ぜひ蕎麦と一緒に頂きましょう。

4. まとめ

健康は毎日の積み重ねが大切です。世界には健康効果の高い食材がたくさんありますが、あまりに高価であったり入手困難な食材であったりすれば、続けることすら難しくなってしまいます。

その点蕎麦は手軽に手に入れることができ、特殊な蕎麦でなければお求めやすい価格なので、毎日続けるのに最適な健康食です。

古くから親しまれる蕎麦は日本の伝統食ですが、健康食としてもとても優秀です。日本のスーパーフードと言っても良い食材として、強くオススメします。

【蕎麦好き必見】蕎麦にはこんなに種類があった!

古くから日本人に愛されてきた蕎麦は、本来とっても素朴な食べ物です。しかし、ひとくち食べれば蕎麦の実の香ばしさがふわりと広がり、つるりとしたのど越しは次の箸を誘います。

一般的には食事の際に音を立てるなんてマナー違反ですが、蕎麦に関してはキレイにすすり上げることが寧ろ美徳とされています。温かい蕎麦も冷たい蕎麦も、豪快にすすり上げれば、さらなる香りが五感すべてを刺激します。

そんな蕎麦はシンプルなのに奥が深く、種類が豊富なのをご存知でしょうか?

ここでは蕎麦粉の種類から、伝統的な"江戸そば御三家"をお伝えするとともに、蕎麦と相性が良く、蕎麦のおいしさを引き上げるおすすめ蕎麦料理をご紹介します。

蕎麦好きの方も、あまりよく知らないけど興味はあるという方も、蕎麦を食べる前にぜひ参考になさってください。

1.蕎麦粉には4つの種類があります

蕎麦の実は外側から殻・種皮・胚乳・胚芽という構造になっています。どの部分の粉を使用するかによって、蕎麦粉は4種類に分かれるのです。そして蕎麦にどの蕎麦粉が使われているかは、蕎麦の色の違いでわかります。

では、この4つの蕎麦粉にどのような違いがあるのかをご紹介します。

1-1. 蕎麦の実を製粉して最初に出てくる「一番粉」

最初に蕎麦の実を挽いたときに割れて出る粉が「一番粉」として扱われます。蕎麦の実の中心部分が多く含まれ、主にデンプン質が主体です。蕎麦粉の色は白く、蕎麦のほのかな香りと上品な甘味が楽しめます。一番粉を使った蕎麦は歯切れとのど越しが良く、全体的に品の良い蕎麦に仕上がります。

1-2. 栄養価の高い「二番粉」

一番粉を挽き、さらに蕎麦の実を挽いたものは「二番粉」として扱われます。二番粉には先ほど説明した蕎麦の実の内側部分である、胚芽や胚乳が多く含まれ、炭水化物やタンパク質・ルチンなどの蕎麦特有の栄養をバランスよく摂ることが出来ます。蕎麦粉の色は淡い緑やクリーム色を混ぜたような色合いをしており、蕎麦の独特の味や香ばしさは一番粉より豊かです。二番粉を使った蕎麦は味・食感・香りを兼ねそろえた、バランスの良い蕎麦といえます。

1-3. 風味が抜群の「三番粉」

二番粉を挽き、さらに蕎麦のみを挽いて作られた蕎麦粉は「三番粉」として扱われます。胚芽・胚乳より外側の部分が入りますので、タンパク質やルチンなど蕎麦特有の栄養の配合が多くなります。 蕎麦粉の色も二番粉より黒くグレーが入ったような色になり、風味は二番粉をも凌ぎます。種皮の繊維質も入ってくるため三番粉を使った蕎麦は、一番粉・二番粉のような繊細さを求める蕎麦より、蕎麦らしい豊かな風味と素朴な食感を楽しむ蕎麦と言えます。

1-4. 乾麺などに使用される「四番粉」

三番粉のあと、外側の殻ぎりぎりまで挽いた蕎麦粉は「四番粉」または「末粉」と呼ばれます。タンパク質と食物繊維が多く、色合いも黒く、これまでの粉より粒子も粗く感じるでしょう。しかし蕎麦の香りは、加工に負けない力強さを秘めていますので、乾麺・茹で麺などに利用されています。

食感が良くないと言われる四番粉を使った蕎麦ですが、香りは強く保存に向いています。乾麺としていつも家に置いておくのに最適なのです。

2.江戸そば御三家って何?

日本に古くから伝わる江戸そばには、三大系統と呼ばれる種類があり、それぞれ「更科」・「砂場」・「藪」と名付けられています。

そんな江戸そば御三家の特徴をご紹介しましょう

2-1. 真っ白な麺が特徴の「更科」

更科と呼ばれる蕎麦は、長野県の更級村よりやってきた蕎麦職人が広めたことに由来します。古くは江戸時代、武家屋敷の保科家にお世話になりながら江戸そばを広めました。

更級村と保科家の一文字目をとり「更科蕎麦」と名付けられた蕎麦は、前述した一番粉を使用した「更科粉」から作られる、白い蕎麦です。蕎麦といえば当時は、蕎麦粉を練った団子状のものが主流だったため、のど越しなめらかで上品な香り漂う更科蕎麦は、瞬く間に江戸に広まったのだそうです。

2-2. 甘くて濃いめのそばつゆが特徴の「砂場」

砂場蕎麦の由来はさらに古く、大阪城築城の頃に遡ります。当時砂置き場だった「砂場」と呼ばれる場所に、働く人々が仕事の合間に手軽に食べられるようにと、一軒の蕎麦屋が始まりました。砂場蕎麦は、当時の愛称だった「砂場」がそのまま定着したものなのだといわれています。

忙しい合間にすぐにエネルギー補給ができる砂場蕎麦は評判を呼び、徳川家康が江戸城へ居城する際に、共に江戸へと移りました。

そんな労働者に愛されていた砂場蕎麦は、甘めの濃いつゆが特徴です。疲れた身体に甘いつゆと蕎麦の香りは、どれだけ町民の心と身体を癒していたことでしょう。また、蕎麦を食べ終わった後のつゆに蕎麦湯を入れてほっと一息つくのも、砂場蕎麦の楽しみの一つと言われています。

2-3.緑がかった麺が特徴の「藪」

藪蕎麦の由来については諸説ありますが、藪蕎麦発祥と言われる店に大きな竹藪があったことから、「藪」と呼ばれるようになったと言われています。

そんな藪蕎麦の特徴は、緑がかった蕎麦と少し塩辛いつゆです。藪蕎麦に使われる蕎麦は二番粉・三番粉を使った風味の強い蕎麦で、その香り高さは辛めのつゆにも負けません。

江戸の通な蕎麦の食べ方として「蕎麦の先を少しだけつゆにつけて食べる」という食べ方は、この藪蕎麦に由来します。

発祥とされているお店の常連客の多くは、忙しい職人だったそうです。忙しい中でもつゆの香味と蕎麦の豊かな香りを味わえる藪蕎麦は、そんな職人さんのパワーの源だったのかもしれません。

3. おすすめ蕎麦料理を紹介

蕎麦の良い所のひとつとして、バリエーション豊かに楽しめるところです。温かくしても冷たくしてもおいしく楽しむことができ、さらに種物と呼ばれる具をのせることで様々な味を堪能できます。具と一緒に食べることで、蕎麦の栄養だけでなく多方面から栄養を摂取できるという利点もあります。

では、そんなバリエーション豊かな蕎麦料理の中でも、特におすすめの三品をご紹介します。

3-1.「鴨せいろ」とは

鴨せいろは、冷たくしめた蕎麦を暖かい鴨汁につけて食べる蕎麦です。温かいつゆに煮込まれた鴨肉の風味が溶け込み、鴨の油が蕎麦の風味をさらに引き立てます。ふわりと香る葱の香味も相性が良く、暑い夏のエネルギー補給におすすめの一品です。

また、冷たい蕎麦を食べる時に出される蕎麦湯を、鴨せいろでも楽しむことが出来ます。その際、鴨汁に蕎麦湯を注いでは量が多くなりすぎてしまうので、お店の方に蕎麦猪口とレンゲをお願いしましょう。蕎麦猪口に鴨汁をレンゲで適量入れ、蕎麦湯でお好みの濃さでいただきます。

3-2.「天そば」とは

天そばは、天ぷらとせいろ蕎麦が別々に盛られた蕎麦です。通常そばつゆと天つゆは分けで提供されますが、そばつゆにまとめて提供されるお店もあります。天ぷらのサクサクした食感を楽しむことができ、そばつゆと天つゆが分かれているお店では、そばつゆに油をつけることなく、純粋に蕎麦の味をいただけます。

海老や茄子・大葉などの天ぷらが添えられることが多く、季節によって穴子の天ぷらを添える店もあります。天ぷらになる野菜や魚介類の栄養を一緒に摂れるばかりか、天ぷらのサクっとした食感と蕎麦のつるっとしたのど越しのコントラストが楽しい蕎麦です。

3-3.「鴨南蛮」とは

鴨南蛮は、前述した鴨せいろがひとつになった温かい蕎麦です。「南蛮」の由来は諸説ありますが、葱の事を指します。

鴨は冬に最も脂がのり、美味しさが増します。そんな寒い時期に温かい鴨南蛮は、身体を芯から温めてくれます。また同じ時期に旬を迎える、柚子の皮が添えられることもあります。

4.まとめ

蕎麦は使われる蕎麦粉によって、味・香り・食感・栄養に大きく違いがあり、それぞれに良さを持ち合わせています。

香り高い蕎麦を食べたいときは二番粉・三番粉を使った藪蕎麦、香り高い蕎麦を甘めのつゆで食べたいときは砂場蕎麦、蕎麦の香りを上品に楽しみたいときは更科蕎麦など、気分に応じて変化をつけられるのも蕎麦の良い所です。 また蕎麦粉の特性を知ることで、蕎麦以外でもガレットやパンケーキなど、蕎麦を使った料理に活かすことが出来ます。

空腹をただ満たすだけでなく、蕎麦の特性や種類を理解して楽しめるようになると、生活の中で幸せが増えていきます。ぜひ参考になさってください。

これを知ってたらあなたもそば通!蕎麦の粋な食べ方を紹介

蕎麦という食べ物はラーメンやうどんと同じ麺類なのに、食べ方にいろいろな制限やマナーがありそうでちょっと近寄りがたい感じ、ありませんか? このコラムでは基本の食べ方をレクチャーしつつ、マメ知識を交えながら「ツウ」で「イキ」な食べ方を伝授します。 これを最後まで読めば、もう気後れする必要はありません。

1. はじめは蕎麦本来の味を楽しもう

1-1.塩をかけて食べるのも粋

蕎麦は何といっても香りを楽しむ食べ物です。まずはつゆや薬味を使わず、2、3本つるりとすすってみましょう。鼻に抜ける香り、食感、さわやかなのど越しを感じられれば、すでにあなたも「そば通 への扉を開け、第一段階をクリアしたと言っても過言ではありません。もちろん、なんだかよくわからない、という人もいるでしょう。しかし諦める必要はありません。これはいわゆる最初の作法として記憶しておいてください。何度かトライしているうちに徐々に感じられるものですから、構わず次の段階に進みましょう。

ちなみに何もつけずに食した後に、ほんの少しの塩で食べるのも粋な食べ方です。塩は蕎麦の風味や甘みを引き立てる役割がありますから理にかなった食べ方でもあります。

1-2.蕎麦の本来の味を堪能した後に「蕎麦つゆ」

蕎麦本来の味を堪能したら、つぎはつゆです。と言っても蕎麦をつゆに浸して食べるのではなく、つゆだけを唇に触れる程度味わってみましょう。この時「飲む」というイメージではなく、「ダシと醤油の風味を見る」という感覚でいるように注意してください。可能であれば、このつゆが「辛口の関東風」なのか「薄目な関西風」なのかを見極めましょう。

しばしば「そば通」を気取る人が、蕎麦はあまりつゆに浸さないのがツウという語り方をしますが、これは正確ではありません。じゃぶじゃぶ漬けるのは確かに粋ではありませんが、塩味が濃い辛口の関東風のつゆにはあまり浸すと蕎麦の本来の味がわからなくなるという意味合いから軽く浸すという習慣ができたのです。

蕎麦もつゆも自然由来の味を楽しむものです。しかし、同じ店でも収穫された原料や日々の温度・湿度によって微妙に味は変わります。このことから蕎麦のみ、つゆのみをまず味わうのはそのコンディションを見る、ということでもあるのです。それを踏まえて、今日この店ではつゆに軽めに浸す、あるいはもう少し深く浸す、その調整ができるのが本当の「通」です。

2. そばつゆに浸さずに食べるのが通の食べ方

2-1. 薬味はつゆに入れずに直接蕎麦にのせる

基本的に薬味の役割は、味のアクセントをつけることと、栄養価を付加したり、消化を助けたりすることです。現在は蕎麦の薬味と言えば一般的なものがネギとわさびです。場所によってはゴマや大根おろしが添えられている場合もあります。

実は江戸時代には大根おろしの方が一般的で、それが無い場合にわさびで代用していたそうです。蕎麦に含まれるルチンは毛細血管を強くする効果を持ち、動脈硬化や高血圧を防いでくれますが、大根おろしも似た性質を持っているので相乗効果があって、良い組み合わせと言えます。

わさびもネギもつゆに入れてしまう人がいますが、つゆの味を消してしまいます。蕎麦の上に都度少しずつ乗せて食べるのが味わい深い食べ方です。バリエーションとして、蕎麦をつゆにつけて食べる合間に薬味だけ食べるという方法もあれば、つゆをつけずに蕎麦と薬味だけで食べるというのもアリです。

基本的には主役の蕎麦を引き立ててこその薬味ですから、適量を使って残っても構わないというスタンスで行きましょう。

2-2. 途中で噛まずに一気に食べる

蕎麦は噛まずに食べる。これも良く語られることですが、これは2つの意味を想像させます。口に入れる時噛み切ってはいけないのか、口の中で噛んではいけないのか、どちらでしょうか?

これは「蕎麦の香りをより深く楽しむため、すする途中で噛み切らない」という考え方が「噛まない」の部分だけクローズアップされたものです。ですから口に入れたものは噛んで食べても大丈夫です。ただしやはりのど越しは重要ですから、あまり細かく噛み砕くというのではなく、このコラムでは数回程度噛んで飲み込むという食べ方をおススメします。

蕎麦そのものは比較的消化が良い食材です。しかし蕎麦はお腹の中でガスを出して膨らむ性質もあります。これは健康上問題がなく、むしろ腹持ちが良いという利点ではあります。しかし胃腸が弱い人にとっては、あまり噛まずに食べるのはよりもたれる原因となることがあります。

通ぶって噛まずに飲み込んでお腹の調子を悪くする、などと言うのは江戸っ子に言わせれば粋ではありません。適度に噛んで美味しく食べ、消化にも良いというのが蕎麦の良いところです。

2-3. 蕎麦は音を立てて食べるのが常識

多くの食事では食べる時に音を立てるのはマナー違反ですが、蕎麦はむしろ音を立てて食べるべき食材です。これは何度も書いてきた「香り」を味わうためで、すする行為によって口から鼻に蕎麦のさわやかな香りを運ぶ、という重要な役割があるからです。さらに、すする方がつゆと蕎麦をバランス良く同時に口に入れるのにも向いています。ですから「音を立てて良い」のではなく「蕎麦を美味しく食べたいなら音を立ててすすろう!」と理解してください。

ただし、これはもちろん蕎麦を食べる時の行動です。そば湯を飲むとき、付いている汁物をいただくときはやはり音を立てずに上品に口にしましょう。

2-4.蕎麦の寿命は短い

蕎麦は一般的に伸びやすく、ゆであがってから刻一刻とコシが抜けていく食べ物です。ですから、素早く食べるのが美味しい食べ方であると言えます。

「そば通」を自称する人の中にはほとんど「フードファイトか?」と思わせるような速度で食べる人もいます。もちろんそのような人は食べる間一言もしゃべりません。普通の人がそこまでする必要はありませんが、さっと食べてから会話を楽しんだ方が良い、という程度の知識は持っていても良いでしょう。

ただ、知識という意味でもう少し細かく言えば、蕎麦の作り方によって伸びやすさは変わります。小麦粉を加えず蕎麦粉のみで作った十割蕎麦は伸びやすい特徴があります。

一方、更科蕎麦と呼ばれる白っぽい外観のものは十割蕎麦に比べたらさほど伸びません。十割蕎麦であればより素早く食べる、などケースによって攻略法を変えることこそ「ツウ」への道と言えるでしょう。

3. 仕上げは「そば湯」で堪能

「そば湯」は蕎麦のゆで汁のことで、ルチン、ビタミンB1やB2などの蕎麦の栄養が豊富に含まれていますから健康効果もあります。それらを逃さないためにもぜひいただきましょう。そば湯は蕎麦を食べ終わったから、仕上げにいただくのが一般的です。そのまま飲んでも構いませんし、つゆで割る、薬味を入れるなどももちろんありです。

お店によって急須状の容器に入れられてくるものもあれば、湯呑に注がれて来る場合もあります。そば湯を飲む風習は信州で始まり江戸にも広まったものなので、関西や九州ではそば湯が出ない蕎麦屋も珍しくはありません。最初に出されなくてもお店の人に言えば出るというところもありますから遠慮せずに聞いてみましょう。

4. まとめ

いかがでしたか? 「そば通」への道がいくらか見えてきたのではないでしょうか?蕎麦という食材自体は長い歴史を持っていますが、現在のような形態の食べ方になり、「粋」という言葉が付いて回るようになったのは江戸時代からです。

調べれば江戸での広まり方にも「砂場」「やぶ」「更科」などのバリエーションがあります。製法や蕎麦粉の引き方や練る際の配分などもいろいろあり、大変奥が深い食べ物でもあります。

さっと軽く食べるもよし、てんぷらなどと合わせてしっかり食べるもよし、お酒の締めに蕎麦というのも粋な食べ方です。 これを機会にあなたなりの蕎麦ライフを堪能してみてください。

これでもう恥ずかしくない!蕎麦を食べるときに役立つ知識

あなたは蕎麦の食べ方、どのくらい知っていますか?蕎麦というのは奥が深そうだ、そう思いながらもなんとなく食べている、という人もいますよね。自分ひとりなら「なんとなく美味しい」でも良いのでしょうが、例えば他の人と蕎麦屋へ行く時、ましてデートで、という場合なら基本的なことを知った上で、ディープな知識などもさりげなく披露できるといいですよね。 蕎麦屋でスマートにキメたい人や、恥をかきたくない人のために役立つ知識をまとめました。ぜひ参考にしてください。

1. 蕎麦を食べる時の基本的な順序

蕎麦を食べるに当たって公式なルールがあるわけではありません。ツウっぽい食べ方も色々あるので、絶対に正解という作法もありませんが、まずは一般的な作法をご紹介しましょう。

1.1. 蕎麦だけを食べる

いきなり蕎麦をつゆにつけるのではなく、まずは蕎麦だけを少量つるりといただきましょう。これは「蕎麦の食べ方」を指導するガイド的なものには必ず書かれていますから、日本人共通の認識と思ってよいでしょう。

この2,3本をつるりと食べる、という行為は蕎麦本来の味を堪能する、という目的で行うものです。ですから「正直よくわからない」と思っても、「この蕎麦の香りが鼻に抜ける感覚が好きなんだ」とか言っておけば「わかってる人」っぽいでしょう。

1.2. 汁につけて少しだけ食べる

続いて、蕎麦の下の方、四分の一から三分の一程度を汁に浸してすすります。この前に汁だけをわずかに口に含む、という作法もありますが、これはマニアックなので飛ばしても良いでしょう。

ただし、汁に浸し過ぎないというのは江戸の藪蕎麦の楽しみ方ですから、全ての蕎麦に共通なわけではありません。入った蕎麦屋が藪蕎麦系の味であればこの「全てに共通でない」という知識は口に出しても良いですが、その店がどんな流れの味か判断がつかない時は、静かにセオリー通り浸し過ぎないことだけに注意しながら食べましょう。

ちなみに蕎麦を手繰るのは、山盛りなら頂点から、平盛なら手前からが基本です。これによって必要以上に絡まることなくスムーズに食べることができます。

1.3. 薬味を付けて食べる

ネギ、大根おろしなどの薬味が必ず添えられていますが、これを最初に汁に全て投げ込むのは禁じ手です。少しずつ、都度そばに乗せて食べるのがスマートなようですが、全投入でなければ汁に入れるのもアリでしょう。

そもそも「汁に入れて良い派」と「汁に入れない派」が存在するようなので、平均的にはどちらでも良い行為です。ただしそば湯を楽しむのに取っておくためにも少しずつ使うことをおススメします。

1-4.山葵を付けて食べる

次は山葵を使ってみましょう。「山葵」は「さんしょう」と読んでしまいそうですが「わさび」と読みます。(「さんしょう」は「山椒」と書きます。時々蕎麦屋にも山椒が置いてあるので間違えないようにしましょう)

ねぎは汁に入れても良いと前項で書きましたが、山葵は入れてはいけません。汁に溶かし込むと汁の風味と山葵の香りの双方が打ち消し合ってしまうのです。

蕎麦に少量を乗せて、あるいは箸の先に少しつけて食べるのが一般的で美しい食べ方です。ただし山葵を使うようになった歴史をひもといてみると、昔は魚で取ったダシの臭みを消すために山葵が使われた、という説が有力ですから、現在のように臭みを感じることが少ないダシであれば無理に山葵を使う必要はないとも言えます。

1-5.蕎麦湯を飲む

蕎麦を美味しくいただいた後は蕎麦湯で締めましょう。蕎麦湯は蕎麦を茹でた汁のことで、蕎麦の栄養素であるルチンやビタミンB1、B2が豊富に溶け込んでいますから、栄養素的に考えて飲まない手はありません。味もそれほど濃いものでもないので、そのまま香りを楽しんで飲んでも良いですし、だし汁を入れたり薬味を足したりして飲むのも自由です。

2. 蕎麦に合うお酒って?

2-1 良質であっさりとした日本酒がよく合う

蕎麦屋で日本酒、大人のチョイスという感じで粋な飲み方です。江戸時代は庶民もこのような習慣を持っていたらしく、仕事を上がった職人たちによく利用されていました。

板わさやそばがきなどであっさりした日本酒を一杯か二杯いただき、締めにそばをさっと食べ、長居はしないでスマートに帰るというのも江戸っ子ならではの粋な飲み方だったようです。

現在でも良い蕎麦屋ほどそれに合う良い日本酒を置いています。元来蕎麦の風味やだしの香り、醤油の味わいは日本にジャストフィットしています。特に純米酒、大吟醸酒などで辛口、甘口などの極端でない酒が合うようです。とはいえ、日本酒も無限にありますし、好みも人それぞれ、その土地の特有のお酒を合わせてみるのも楽しいでしょう。

2-2 ビールとの相性も抜群!?

ちょっと意外かもしれませんが蕎麦とビールの組み合わせは実は良好です。蕎麦というのが締めに食べるイメージもあり、その時点でお腹いっぱいだからビールはもう入らない、と思ってしまうのは単に飲み会の延長の考え方です。

ここで書いているのはまず蕎麦屋に行ってビールを飲む、という提案です。何といっても蕎麦もビールも香りを楽しむという点で味わい方が共通しています。また、アルコール度が15度前後ある日本酒よりも5度前後のビールなら気楽に飲めるという意味でもちょい飲み感がある蕎麦とマッチします。

2-3 迷ったら店主に聞くのがベスト

美味しい蕎麦と一緒にお酒も楽しみたいけど、実際に何が合うのかわからない、そんな時はお店の店主さんに聞くのが一番です。その店の蕎麦の味を最も知っているのは店主さん以外いませんし、蕎麦にお酒は付き物ですから、きっと良いチョイスをしてくれます。もし話が出来るようなら、そのお酒を選んでいる理由や、そのお店ならではの蕎麦へのこだわりなども聞けるかもしれません。それこそ最高の肴として、酒も蕎麦もより美味しく感じられるシチュエーションです。

3. 蕎麦屋にある肴は絶品

3-1 出し汁たっぷりの「だし巻きたまご

蕎麦屋で飲む、という経験が無い方は御存じないかもしれませんが、良い蕎麦屋ほど良い肴を提供してくれます。前述した板わさは一見すると「切って盛るだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、シンプルなだけに素材の味で勝負する一品で、お店の質を表すため蕎麦屋としては気が抜けないメニューでもあります。

蒲鉾は基本的に淡白ですが魚肉加工品なので日本酒との相性も抜群です。どんな醤油と山葵を使っているかでそのお店の格が見える場合もあります。さらにお店の特徴が出るのがだし巻きたまごです。蕎麦つゆの味を決める「だし」がふんだんに使われていますし、やはりシンプルなだけに味わい深く、日本酒にもよく合います。

3-2 蕎麦と相性抜群「天ぷら」

「天ぷら」はざる蕎麦やもり蕎麦、汁蕎麦とも絶妙の相性を持っています。セットで頼むのも良し、蕎麦は締めに取っておいて天ぷらでお酒を一杯いただくのももちろん良しです。

前の項で書いた板わさと違い、揚げる技能や衣の厚さなどで無限のバリエーションができる天ぷらもまた、お店の特徴を表すメニューですから、違う意味でお店の格を表します。旬の野菜や魚、えびなどがサクッとした衣に包まれている姿を考えただけでもお酒が進みますね。

3-3 お酒がよく進む「鴨料理

鴨といえば「鴨南蛮蕎麦」を想像される方が多いでしょうが、汁蕎麦の具としてだけでなく、肴として出している蕎麦屋もあります。「鴨焼き」「鴨ロース」などは日本酒にもビールにもジャストフィットします。

現在では食用の鶏と言えばニワトリですが、その普及は明治以降のことです。そのため江戸時代に発展した蕎麦文化にニワトリを扱ったメニューは含まれていないのです。

鴨と言えば蕎麦の薬味であるネギとの相性もよく、柔らかくて臭みも無いことが特徴です。ジューシーに焼いた状態でも、甘めに煮た状態でもお酒のパートナーとしてうってつけです。

4. まとめ

蕎麦の基本的食べ方や、お酒との相性についてご理解いただけたことと思います。とりあえずここに書かれたことさえマスターしていれば、恥をかくことはまずありません。今日から、堂々と蕎麦屋の「のれん をくぐりましょう。

もし興味を持った方は、蕎麦粉と小麦粉の割合や、関東と関西の違いなども調べてみると面白いと思います。蕎麦の世界はさまざまな知識やしきたりがいっぱいですし、お店ごとのバリエーションもあって飽きることなく楽しむことができます。江戸時代の流れをくむ老舗めぐりをする、という粋な楽しみ方もあるでしょう。

これを機会にディープな蕎麦の世界に、ぜひ旅立ってみてください。

蕎麦のつゆは「味噌」だった!?蕎麦の歴史を紹介

蕎麦は現在では身近な食べ物として日本全国で食べられていますが、実は江戸時代までは麺類ではなく、現在とはかなり違う位置づけの食べ物でした。このコラムではその歴史や江戸文化に結びついて大ブレークした背景を探ります。

1. 蕎麦はお米よりも長い付き合いって知ってた?

1-1. およそ9000年以上前から食べられていた

日本で蕎麦を食べていた痕跡でもっとも古いのは、高知県にある遺跡で見つかった9000年以上前のものと思われる蕎麦の実の花粉です。日本人が稲作を始めたのは3000年以上前と言われていますから、付き合いとしては蕎麦の方が圧倒的に長いことが分かります。

1-2. 当時はまだ「麺」ではなかった

蕎麦が文書等の記録として残っているのは奈良時代以前です。そのころにはまだ蕎麦を製麺する技術は無く、粒のままの状態でかゆ状にして食べていたようです。

栽培がおこなわれていたことは明確に文献から読み取れます。平安時代には和歌にも登場する程度には馴染んでいることもわかっています。

1-3.蕎麦は非常食だった!?

蕎麦は荒廃した土地でも成長が可能で、種を撒いてから5日前後で発芽します。35日あれば開花して80日目頃には収穫が可能となりますから米に比べて収穫が早いというのが特徴です。早い場合は60日前後で収穫できるケースもあり、上手く行けば1年のうちに3回から4回の収穫が可能という訳です。また、寒冷地でも栽培可能だったことから、稲作が難しかった寒く土地が痩せた地域でも育てられたこともあり、文化として東北で発達したことも納得できる事実です。

しかし、残念なことに美味しく食べる方法が無かったために、飢えをしのぐための非常食としての用途がメインでした。そのため貴族や役人が食べるものではなく、貧しい農民の食べ物としての期間が続きます。

食べ方としては粥にするか、すりつぶして作った粉を水で練って作る蕎麦がき、焼いて食べる蕎麦焼きです。

ただ、この収穫の速さは大変貴重でした。昭和の時代、日本が激しい戦時体制にあった前後の食糧が不足していた時期には急ピッチで作り続けられ、結果的に主食としても非常食としても日本人と関わってきました。現在では蕎麦の栽培に縁が無いような地域でも、広く日本全国で作られていた記録が残されています。

2. 江戸時代から現在の形状に

2-1.茹でるのではなく"蒸す"

上記の段階では味としてもあまり受け入れられていなかったのか、江戸でもうどんの方が人気の食べ物でした。上方(関西)から伝わった醤油味のだしで食べるうどんはあっという間に受け入れられていったのです。

この頃はまだ茹でて食べるわけではなく、蒸して食べることが主流でした。まだつなぎとして小麦粉を使う文化が無かったので、茹でると細かく切れてしまい、調理しにくく食べにくかったからです。いわゆる十割蕎麦なのですが、切った蕎麦を蒸籠(せいろ)の上で蒸した食べたことから、「せいろ蕎麦」として現在も呼んでいるところもあります。

2-2.江戸の「ソウルフード」だった

江戸時代になると麺として食べるようになり、蕎麦がきと混同しないために「蕎麦切り」という名がつけられます。この名称で今も呼ぶ地域もありますが、多くの場所では省略して「蕎麦」と呼ばれるようになりました。

とはいえ、上方に負けてはいられないと思う人もいたようで、江戸ならではの食べ物が欲しいという理由から蕎麦に着目した人がいました。これは現在で言うご当地グルメ対決と似たような考え方でしょう。主食感があったうどんに対抗してファストフード感を尊重し、つゆも上方の真似をしたくない気持ちから薄口でなく濃い口しょうゆが採用されます。
18世紀の中盤になると小麦粉をつなぎとして使う二八蕎麦が誕生しました。茹でることが可能となって味が良くなると、江戸ではいよいよ蕎麦屋が増えていき、うどん屋を駆逐していきます。

この頃には蕎麦を食べる文化と、江戸の人々が大切にしたライフスタイル=「粋」が結びついていきます。蕎麦の湯で時間を待てないせっかちな江戸っ子が、待っている間に酒を楽しむようになります。店側もその待ち時間で利益を上げようとそれに合う肴を提供し始めました。それは「板わさ」という薄く切った蒲鉾に山葵と醤油を添えたものや、「天たね」(現在で言うてんぷら)などで、事前に準備しておけば蕎麦屋としてはさっと出せるメニューです。板わさや天たねでさっと酒を飲み、締めにそばを食べて帰る、長居はしない、というスタイルが江戸の町人文化に上手くマッチして、蕎麦は江戸っ子のソウルフードとなっていくのです。

このブームに支えられて現在まで続く老舗が生まれました。藪(やぶ)、更科(さらしな)、砂場(すなば)の三つの系譜です。これらは江戸時代に存在した無数の蕎麦屋の中で勝ち残っていく名店となるのです。

3. そばつゆは「味噌」ベースだった!?

江戸で蕎麦ブームが起こる前は、現在のようなそばつゆで食べることはありませんでした。「味噌だれ」と呼ばれるものが味付けの主流で、煮込んだ味噌を布袋に入れて吊るした状態で、布で越されて垂れてくる汁で食べていたのだそうです。これに大根の汁、鰹節、おろし大根、あさつきを薬味としており、芥子(からし)や山葵(わさび)も使っていました。予想はしにくいですが現在とは全く違う味わいであったことは想像がつきます。

4. ご当地そば

蕎麦は日本の食文化に広く浸透しており、長い歴史の中でさまざまに変化しながら、いろいろな地域で今も楽しまれています。ここではいくつかのご当地蕎麦を取り上げてみましょう。

4-1.にしん蕎麦

にしん蕎麦と言えば京都の発祥と言われています。1882年(明治15年)に松野与三吉という人が考案したもので、それ以前からあった「身欠きにしん」を蕎麦と合わせる提案をしました。身欠きにしんはたんぱく質、ビタミン、ミネラルを豊富に含んでおり、海が無い京都にとっては貴重な食べ物です。これを甘辛く炊いたものを蕎麦に乗せることで、栄養を強化した上に、味わいもよかったため京都の人々に受け入れられました。

北海道でもにしんそばを食べる文化がありますが、それは何といってもにしんの漁獲地だったからです。味付けとしては関東風の濃いだし汁に刻みのりを添えており、京都とのにしんそばの味わいとはずいぶんと異なっています。

4-2.はらこ蕎麦

岩手県は北海道に次ぐシャケの産地です。そのシャケから取り出した「はらこ を熱い蕎麦にかけるのがはらこ蕎麦です。

はらこ=いくらですからビジュアル的にもかなり満足感があります。半熟になったイクラのプチプチとした食感を楽しみながらいただく蕎麦は絶品です。

4-3.しっぽく蕎麦

「しっぽく」という名前がつく料理は全国にありますが、ここでは長野県のしっぽく蕎麦を取り上げました。具だくさんのいわゆる五目蕎麦とも言うようなもので、入れられている具はお店によって異なりますが、蒲鉾、鶏肉、卵焼き、花麩などが乗った目に美しい蕎麦です。長野県では「しっぽこ」と発音する人も多いようです。

5. まとめ

蕎麦の歴史や文化についてまとめてみました。意外に長い日本人との関りや、味噌味で食べていたことなど知らないことが多かったのではないでしょうか。蕎麦に関する知識はまだまだ奥が深く、今回も少し触れた地域性や、その味の違い、文化との関りなどを調べながら食べ歩きするのもまた面白いでしょう。

例えば上の例では「はらこ蕎麦」を上げましたが、同じ岩手県では娯楽色あるいはもてなしの要素が強い「わんこそば」が有名です。島根県出雲市では「出雲そば」あるいは「割子(わりご)そば」と呼ばれる系譜の蕎麦があります。それぞれに食べ方も違えばだしの味や具材、薬味なども特徴があります。これを機会にさまざまな蕎麦を食してみてください。

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